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千葉県・南房総。監督自身のルーツでもあるこの場所からすべてが始まった。2011年の震災を経て、あらためて自然と人間との関係を見つめ直した結果、「大地」とそこに住まう「人間」、その狭間で跋扈する「異界の存在」というトライアングルを、シンプルで真っ直ぐな《妖怪退治の活劇》として昇華すべく構想されたのが、映画『みずち』である。
みずち、古くは「みつち」。「水の霊的な力・存在」の意。八岐大蛇に代表される日本の水神。水に住み、蛇に似て人を害するという想像上の動物。一般には河童などの造型で慣れ親しんだイメージに、本作ではまったく新しいかたちでのアプローチが試みられた。それは人間的でありながら人間になりきれない、残酷でありながらも滑稽な存在であった。
主役の里見誠児役には『サウダーヂ』(2011/富田克也)をはじめ、インディペンデント映画にも数多く出演する川瀬陽太。誠児の妹・薊役には『Playback』(2012/三宅唱)での好演も記憶に新しい汐見ゆかり。そして地元の郵便配達員・学役には監督自らが役者初挑戦を果した。さらに、誠児に語りかける愛犬ジョンの声には前衛家・𠮷田アミ。音楽は菊地成孔とのヒップホップクルー「JAZZDOMMUNISTERS」や劇団『マームとジプシー』、映画『乱暴と待機』(冨永昌敬監督)などを手がける大谷能生。
故郷にダムがつくられ、生家は湖の底に沈んだ。
父の死をキッカケに里見誠児の頭の中でとつぜん声が響き出す。 それは、幼い頃に殺された愛犬ジョンの声だった。 ダム建設を巡って人間たちが対立しあう渦中で ジョンは《みずち》によって虐殺されたのだった。 幼い誠児にとって大きな傷となっていた事件が、 数十年の時を経て再び生々しく迫ってくる。
「僕の仇を討って…」とみずちへの復讐をせがむ声に導かれて、 故郷である千葉県・南房総へと旅立つ誠児。 まるで気が狂れてしまったような誠児を心配して、妹の薊は旅への同行を決心する。 そして、再会したみずちとの追走劇のなかで、誠児は郵便配達員・学と出会った。 すんでのところでみずちを捕り逃すも諦めきれない誠児は、 地元に詳しい学を無理矢理連れ回す。
はじめは反発するも、退屈で平穏な日常に鬱憤を募らせていた学は、 次第にみずち退治にロマンを抱くようになり、 誠児たちとともに同じ目的に向かって走り始める。
やがて誠児たちはみずちの住処を発見し、足を踏み入れたのだが、 そこには、驚くべき光景が広がっていた……
川瀬陽太 Yohta Kawase
1969年神奈川県出身。『RUBBER'S LOVER』(1996/福居ショウジン)で役者デビュー。以後、ピンク映画を皮切りに、最近では一般映画や舞台などにも活動の場を広げて活躍中。インディペンデンド映画にも数多く出演し、若い映画監督たちからの信頼も厚い。
堀江 実 Minoru Horie
1980年千葉県出身。早稲田大学第二文学部表現・芸術系専修卒業。高校時代より映画を志し、大学在学中は柳町光男に学ぶ。2003年、長谷川和彦の助監督候補に選出され、以後シナリオ執筆に参加。2007年夏から翌年2月にかけ初監督作品『熊になる』を製作。本作『みずち』では初めての出演を務めた。
汐見ゆかり Yukari Shiomi
1981年岡山県出身。2001年よりモデルとして活動をはじめ、カネボウ化粧品「freeplus」や日産自動車「モコ」など多くのCMに出演。2007年より女優業を中心に活動。『ナチュラルウーマン2010』(2010/野村誠一)で映画初主演を果し、翌年の『明日泣く』(2011/内藤誠)では、自由奔放なジャズピアニストのヒロイン・キッコを見事に演じた。
𠮷田アミ Ami Yoshida
1976年生まれ。音楽・文筆・前衛家。1990年頃より音楽活動を開始。2003年にソロアルバム「虎鶫」をリリース。同年、Utah KawasakiとのユニットastrotwinとSachiko.MとのユニットcosmosのCD「astrotwin+cosmos」がアルスエレクトロニカデジタル・ミュージック部門のグランプリにあたるゴールデンニカを受賞。文筆家としても活躍し、小説やレビュー・論考を発表。著書に「サマースプリング」(太田出版)、小説「雪ちゃんの言うことは絶対。」(講談社)がある。
大谷能生 Yoshio Otani
1972年生まれ。音楽家・批評家。菊地成孔との共著『憂鬱と官能を教えた学校』や、単著『貧しい音楽』『散文世界の散漫な散策 二〇世紀の批評を読む』を上梓するなど、積極的に執筆活動を行う。その傍ら、音楽家としても精力的に活動し、sim、masなど多くのグループに参加。ソロ・アルバム『「河岸忘日抄」より』、『舞台のための音楽2』をHEADZから、『Jazz Abstractions』をBlackSmokerからリリース。最新作は『マームとジプシーと大谷能生』(EWE)。演劇やコンテンポラリー・ダンスの舞台などを含め、さまざまなセッションで演奏を行っている。
堀江 実 Minoru Horie
1980年千葉県出身。早稲田大学第二文学部表現・芸術系専修卒業。高校時代より映画を志し、大学在学中は柳町光男に学ぶ。2003年、長谷川和彦の助監督候補に選出され、以後シナリオ執筆に参加。2007年夏から翌年2月にかけ初監督作品『熊になる』を製作。本作『みずち』では初めての出演を務めた。