
東京の西のはずれ、まもなく古希を迎えようとしている男は、自宅の庭で毎日首を吊っている。
1960年代後半より身体表現をはじめた彼は、半世紀生きたことを契機に、チェーホフのワーニャ伯父に自身を重ねながら、
日々の営みとして自宅の庭で首を吊り始めた。それから20年近くものあいだ、毎日のように彼は首を吊ってきた。
本作の監督・堀江実は、彼の孤高の行為(アクション)に静かな衝撃を受けると、2014年12月の朔旦冬至より、
ひとりきりで彼と対峙しながら撮影を開始した。1年以上にも及ぶ撮影を経て、当初の記録映像は、新鋭・藤田陽介の音楽と共鳴しながら、
彼の身体の内側へと喰いこむような展開へと飛躍し、やがて、ドキュメンタリーとフィクションの垣根を超えた次元へと結晶化していく…
1947年、群馬県安中榛名生まれ。
高校卒業後、演劇を志し上京するも、東京で出会った芸術家たち、とりわけハプナー・風倉匠に感化され、演技、ダンス、舞踏、そのどれにもカテゴライズされえない先鋭的な身体表現に突き進む。
1971年には、天井桟敷館にて首吊りパフォーマンスを用いた初めての作品『a’』を発表。
その後も、笹原茂朱主宰による劇団夜行館への参加、舞踏の祖・土方巽の死直後に行われた公演『感情の周囲をめぐる物として』(1986)においては自らの胸に焼鏝を押し当てるなど、比類なきラディカルな身体表現の軌跡を描きつづけてきた。
1997年より、首吊り行為を自らに課す日々を生き始める。彼の行為によって踏まれつづけた自宅の裏庭は、やがて粘土のような質感を帯び、その歩行の痕跡は緩やかな起伏となってあらわれていく。
2004年には、自宅の庭を「庭劇場」と命名、自らを「首くくり
広島県尾道市生まれ、香川県出身。2009年、空想を具現化した完全自作のパイプオルガンを製作。その自作パイプオルガンと声を主軸に、水や火の楽器化、空間の利用など、パフォーマティブな要素も織り込んだ形で音楽を展開する。ソロの活動を中心に、EYヨ(BOREDOMS)とのコラボレーション舞台「メモリーム」や、山川冬樹との公演「カントリー・ジェントルメン」など、コラボレーション・ワークも多数。映画音楽やアニメーション音楽の制作、展示活動なども行う。
1980年東京生まれ。高校時代より映画を志し、大学在学中は柳町光男に学ぶ。 2003年、長谷川和彦の助監督候補に選出され、以降『連合赤軍』のシナリオ執筆に参加。20代半ばから自主製作にて映画づくりをはじめ、初監督作『熊になる』(2008)、自ら出演・監督した『みずち』(2013)、初めてのドキュメンタリー作品『首くくり栲象の庭』(2016)などを発表。 最新作は、前後篇5時間に及ぶ長編ドキュメンタリー『黒沢美香&ダンサーズ 稽古ドキュメント2017』。